原支配人による公演レビュー

2022年10月19日 (水)
【原支配人による公演レビュー】
2022年10月1日(土) 大谷康子のヴァイオリン賛歌 第6回 <忘我>

大谷康子さんは「白寿こどもヴァイオリンコンクール」で審査をしてくださっており、ご出演のBSテレビ東京「おんがく交差点」はハクジュホールで収録しています。実は私が大学4年生の頃、所属していた大学オーケストラの欧州演奏旅行の随行ソリストが大谷さんであったのがご縁の始まりです。
「大谷康子のヴァイオリン賛歌」シリーズ、今回のテーマは<忘我>です。大谷さんが我を忘れるほど好きなのはヴァイオリンと美味しい料理という事で、音楽とお料理がコンセプトでした。このシリーズの企画構成協力をして下さっている伊藤裕太さんにかなり助けていただいたのですが、今回はコース料理に見立てたプログラムということで、浜松町にある「リストランテ カーサ瀬戸内」という、瀬戸内海の食材をふんだんに使用したイタリアンの大谷敬太シェフ監修のコース料理と、大谷康子さんが考えた曲目を重ね合わせ、お話しを交えてのコンサートになりました。お二人とも大谷さんなのは偶然です。
宴の始まりに相応しく、本編の前にアラールの「椿姫ファンタジー」より “乾杯の歌”と、フランチェスカ・カッチーニの「シャコンナ」が演奏されました。アンコールを最初に聴いたかのようなサプライズとなりました。
それから、
前菜:J.S.バッハ <黒イチジクと生ハム>
スープ:エルガー <紫芋の温製スープ>
パスタ:モーツァルト <オリーブ夢豚とキノコのタリアテッレ>
グラニテ:ウェーベルン <2000年前のグラニテ>
肉料理:フランク <オリーブ牛ヒレ肉のロッシーニ風>
デザート:サラサーテ <クレープシュゼット>
というプログラムでした。(曲名は下記参照)
パスタは、大谷敬太シェフがモーツァルトの好物を調べ、素材に豚肉とキノコを使用されたそうです。
各曲の間に、大谷康子さんによる「音楽は音を楽しむと書く」というのを体現するような最高の解説により、会場は何度も爆笑に包まれました。また、デュオの相手であるピアニスト松本和将さんは、繊細なタッチでコンサートを引き立て、大谷さんに花を添えて下さいました。
前もって「リストランテ カーサ瀬戸内」で大谷康子さんが実際にコースを召し上がり、大谷敬太シェフが改良を重ねたお料理を、10月31日まで「リストランテ カーサ瀬戸内」でお召し上がりいただけます(完全予約制です)。当初の予定ではグラニテは柑橘風味でしたが、大谷康子さんが「ウェーベルンの12音階の曲に柑橘は合わないわ」とおっしゃったそうで、私がお店でいただいた2000年前のグラニテというのは、ウェーベルンっぽくするために味のついていない氷だったのはユニークでした。
大谷さんの明るいお人柄が溢れたコンサートになり、日頃の喧騒を忘れさせてくれるような1日となりました。
第7回<好奇心>は来年10月に開催予定です。どうぞお楽しみに。

2022年10月1日(土) 大谷康子のヴァイオリン賛歌 第6回 <忘我> 15:00開演
[出演]
大谷康子(ヴァイオリン)
松本和将(ピアノ)
[プログラム]
〈アミューズ〉アラール:「椿姫ファンタジー」より “乾杯の歌”
フランチェスカ・カッチーニ:シャコンナ
〈前菜〉 J.S.バッハ(S.L.ヴァイス編):ヴァイオリンと通奏低音のための組曲 イ長調 BWV 1025 より 第5曲 サラバンド
〈スープ〉 エルガー:愛の挨拶 op.12
〈パスタ〉 モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219 「トルコ風」より 第1楽章 (ヨアヒムによるカデンツァ)
〈グラニテ〉 ウェーベルン:ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 op.7
〈肉料理〉 フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調 [生誕200年記念]
〈デザート〉 サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン op.20

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