アーティストインタビュー

音楽の対話「DUO」の魅力を感じよう

上田晴子
パリ国立高等音楽院で教鞭をとりながら、国内外でピアニストとして活躍する上田晴子さん。2024年2月28日、当ホールで開催されるチェリストの笹沼樹氏とのDUOリサイタルに向けてお話を伺いました。

上田さんには、昨年11月、当ホールで開催したミュージック ダイアログ(室内楽を通し、世界で活躍する若手アーティストを育てる活動をしている団体)による「DUO プロジェクト」にご出演いただきました。室内楽というとトリオ、カルテット、クインテットなどが一般的で、DUOはあまり見かけないように思いますが、実際どうなんでしょうか?

上田

そうですね。特にピアノは伴奏者という仕事があるので、対等にとらえられないこともあるかもしれませんね。たしかに以前は、伴奏者として小さく名前が出ているか、写真がないことも多かったのですが、今は「共演」や「DUOリサイタル」という言葉を耳にするようになり、有るべき姿に落ちついたと思います。

私自身、演奏を聞いている時、無意識に主旋律を追っていたのですが、ある音楽家の方から、対等の室内楽としてDUOは大事だということを教えていただき、そこからピアノの音が聴こえてくるようになりました。

上田

そうなんですね。でも、きっと耳に入っていたと思いますよ。

そんなとき、コロナ禍にパリから帰国され日本にいらっしゃる時間が増えた上田さんや、ミュージック ダアログを主宰されているヴィオリストの大山平一郎さんにもお会いすることができ、タイミングよく今回の企画を行うという流れになりました。

上田

ありがたいですね。

今回、DUOのお相手として、なぜチェリストの笹沼樹さんと組まれたのでしょうか?

上田

ミュージック ダイアログで一緒に演奏したときに、練習開始3分くらいで笹沼君の音を聞いて「あれ?」と思ったんです。ヴァイオリニストのジャン=ジャック・カントロフは私の長年の名演奏パートナーですが、彼と弾いているときの感覚に似ていたんです。そこで、うまくいくかわからないけど、とにかく一緒に弾いてみないか、ということでお誘いして、私の地元でコンサートをしてみたらとてもうまくいって。そんな経緯があり、DUOリサイタルをするなら、彼と共演してみたいと思ったんです。

ビビッときたのですね! 笹沼さんは、齋藤秀雄メモリアル賞の記念公演として、東京オペラシティでバッハの無伴奏チェロ組曲を全曲演奏されていました。20代後半でこの曲を弾くってすごいですよね。

上田

笹沼君に聞いたら、師匠の堤剛先生が、毎回レッスンの始めにバッハを1曲弾かせるらしいのです。でも、バッハって基本なんです。それくらい大変なんです。
実は、私は時々しばらくピアノに触れないことがあるのですが......。

指が動かなくなりませんか?

上田

そしたらバッハを弾くんです。そういうときは、二声や三声の曲を、次に、平均律6曲を弾いて1時間休んで、もう1回6曲弾いて。この練習をしていると2~3日で指が戻ります。バッハの曲は指にも頭にもリハビリになるんですね。ですから、バッハの無伴奏チェロ組曲を全曲弾けるというのは、相当練習を重ねているはず。多分、私の耳は、バッハを弾ける人がわかるんです(笑)。

今回のプログラム曲はどのように選ばれたのですか?

上田

本当は笹沼君とバッハを弾きたかったのですが、作曲家カサドの「スペイン古典様式によるソナタ」がバッハと似たような感じの曲だったので、今回はカサドをプログラムに入れました。それと、洒落っ気と宗教心が同居していてエスプリのきいたプーランクの曲は必ず弾くと決めていました。

スペインとフランスの選曲ですね。どんなDUOになるのか、音楽の対話を楽しみにしています。

私の健康の秘訣

日本に帰っている間は、いつも通っている接骨院によく行きます。そこの先生はアスリートの体のケアをされていた方なのですが、調子が悪い部分を見つけてくださるので、ひどくなる前に芽をつんでいただいています。また、身体に触れて、左右の偏りがわかるときは、モーツァルトばかり弾かずにブラームスも弾くなど、体のバランスがよくなるように練習メニューを変えたりします。あとは、野菜と果物をたくさん食べて、乳酸菌とタンパク質を欠かさず摂っています。食べたらよく寝ます(笑)。また、嫌なことはできるだけしないようにするなど、ストレスをためないようにしています。

※株式会社白寿生科学研究所ユーザー情報誌「ヘルシーメイツ」2024年冬号から転載