原支配人による公演レビュー

2022年12月17日 (土)
【原支配人による公演レビュー】2022年11月25日(金) Hakujuの歌曲 ♯2 麗しく豊かに溢れる余韻 砂川涼子 ソプラノ ~日本のこころを歌う

ハクジュホールの使命の一つに、歌曲のコンサート開催があります。第一線でご活躍されているオペラ歌手の方々がハクジュホールで歌われた際、ほぼ必ず「ここ(ハクジュホール)で歌曲を歌いたい」とお話してくださいます。「ここで歌うと自分の声が線になって飛んでいくのが見える」「ここでは力をいれずに歌える」「声量の大きいオペラ歌手が繊細な歌曲を歌わないで良いなんて事はない」等々のご意見やご要望、ご感想をいただきます。歌曲を歌うことで、繊細な曲の表現をされたいという感じです。
ここ数年の主催公演でもシューベルトの三大歌曲をギター伴奏で演奏したり、シューマンの「詩人の恋」を何度か取り上げたりしましたが、歌曲の公演は興行的に、言い換えればチケット販売に苦労する傾向があるので、知名度の高い曲をつい選びがちです。日本では歌曲というとドイツリートで、その中でも上記に挙げたシューベルトやシューマンの歌曲が歌われることが多いです。しかし、色々な国に色々な歌曲があるという事実を顕在化すると、それこそ日本の文科省唱歌も日本の歌曲であると思います。
不定期で行っているHakujuの歌曲シリーズは、当初2020年に小山由美さんのオールブラームス歌曲、2021年に望月哲也さんのホルンを交えたプログラムを予定しており、ひょっとするとコロナ禍がなければ今頃第5回位になっていたかもしれないのですが、望月哲也さんの公演が延期となり、今回の砂川涼子さんでようやく2回目を迎えました。
今回は人気の砂川さんのお力を借りて日本歌曲に挑戦。砂川さんがオール日本歌曲のコンサートをされるのは生まれて初めてだったという事で、ホールにとっても砂川さんにとってもチャレンジとなりました。ウィークデーの15時開演というのも、プログラムから客層を考えた上での挑戦でした。
当初想像していたプログラムは武満徹や文科省唱歌が入り交じるものでしたが、砂川さんが提案してくださったのは前半が全て木下牧子先生、後半が全て中田喜直先生というこれまたチャレンジングな選曲で、“花” や “気持ち” といったテーマでの選曲でした。木下さんの曲の序盤は、ピアニッシモが映える印象の曲が多く、素晴らしい曲の数々でした。後半の中田喜直先生の曲は日本語の中に情感があり、砂川さんの感情表現やオペラのアリアを歌い上げるような身のこなし、圧倒的な声量が印象的でした。後ろの方で聴いていて、お客様が引き込まれていくのを感じました。
余談ですが、コンサートに行った後は全てTwitterに感想を投稿しています。歌曲の主催公演は興行上難しいものがあるが、どこかが開催しないと広がらないのと、演奏機会を欲する演奏家がいる事を投稿したところ、フォロワーが少ないながらも大きな反響を頂きました。木下牧子先生からもコメントでエールを頂戴した事は感動的でしたが、お名前を間違えて投稿していた事もご指摘頂き、大変失礼いたしました。

2022年11月25日(金) Hakujuの歌曲 ♯2 麗しく豊かに溢れる余韻 砂川涼子 ソプラノ ~日本のこころを歌う 15:00開演
[出演]
砂川涼子(ソプラノ) 藤原藍子(ピアノ)
[プログラム]
木下牧子(詞:岸田衿子):「花のかず」より
“花のかず”
“夢のなかの空”
“クルミ”
“足おと”
“曇り日なら”
“竹とんぼに”
“あさっておいで”
木下牧子(詞:能祖将夫):なにかが、ほら
木下牧子(詞:まど・みちお):おんがく
中田喜直(詞:小野芳照):ゆく春
中田喜直(詞:鎌田忠良):霧と話した
中田喜直(詞:金子みすゞ):「ほしとたんぽぽ」より 第12曲 “わらい”
中田喜直(詞:加藤周一):さくら横ちょう
中田喜直(詞:三好達治):たんぽぽ
中田喜直(詞:堀内幸枝):サルビア
中田喜直(詞:原篠あき子):髪
中田喜直(詞:寺山修司):悲しくなったときは

[アンコール]
平井康三郎(詞:小黒恵子):うぬぼれ鏡

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