原支配人による公演レビュー

2023年10月12日 (木)

【原支配人による公演レビュー】
2023年8月18日(金)~20日(日) 第17回 Hakuju ギター・フェスタ 2023
原点回帰3 ~6人のギタリストが魅せる華やかなギターの世界~

8月18日から20日の3日間、「第17回 Hakuju ギター・フェスタ 2023」が開催されました。題して「原点回帰3 ~6人のギタリストが魅せる華やかなギターの世界~」。2020年は開催しなかったので足掛け18年、よくここまで続きました。メインアーティスト、企画、ホールが変わることなく18年行われている国内イベントは、コンクールや音楽祭を除くとほぼ皆無なのではないでしょうか。毎年ギタリストが舞台上でハクジュホールへの感謝の意をお話してくださいますが、業界のレジェンドの荘村清志さんと福田進一さんが真剣に仲睦まじく続けて来られたお人柄、人脈、意思、お知恵の賜物です。ホール側こそ感謝しております。今回も3日間、各日2部構成で合わせて6部、そして土曜日の午後にレジェンドのお二人が推薦する旬のギタリストによるコンサートを開催いたしました。
18日(金)第一夜のPart1は福岡在住の女流ギタリスト、上野芽実さんが首都圏デビューでした。お生まれは宮崎で、フランスのストラスブール国立音楽院をご卒業、現在は福岡のギター教室に80人ものお弟子さんがいらっしゃるそうです。まだお若い方ですが、プログラムは有名な曲に頼らずにしっかりと構成され、色々なメロディ、ギターの特色が生かされた曲を演奏していただきました。アンコール・ゲストの荘村さん、福田さん、河野さんとのカルテットではラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を演奏し、しっとりと終わりました。
Part2は徳永兄弟によるフラメンコギター。ご出演いただくのは2016年の「リクライニング・コンサート」以来でした。ビゼーの「カルメン・フラメンコ・ファンタジー」よりⅠ. “アラゴネーズ”、ピアソラの「リベルタンゴ」をお二人の編曲で、その他に自作曲を4曲演奏されました。以前ご出演いただいた時からさらにレベルアップされ、Part1から打って変わった炎のような激しい音楽に会場が魅了されていました。
19日(土)「旬のギタリストを聴く」は岡本拓也さんのリサイタルでした。お客様にリラックスしていただこうというコンセプトで、ロマン派音楽に絞ったプログラム。曲目の説明も非常に分かりやすく、ギターではあまり聞かないシューベルトやシューマンの作品を岡本さんの編曲で魅せてくれました。企画力があり編曲も素晴らしく、これからが楽しみなギタリストだと感じました。また、本編の3公演よりも先に「旬のギタリストを聴く」のチケットが完売するという快挙を成し遂げました。
第二夜のPart1は女流ギタリストの河野智美さん、なんとハクジュホールデビューでした。緊張のあまりかリハーサル後に寝てしまわれたそうで、開演に間に合わず!というアクシデントがありましたが、バロックと南米を散りばめたプログラムを素晴らしい集中力で演奏されました。アンコール・ゲストは福田進一さん。ご本人曰くギター・フェスタに呼ばれる事はないと思っていたそうですが、師匠との共演に感動していらっしゃるのが舞台上から伝わり、なんだかジンと来ました。
Part2は荘村清志さんでした。昨年は映画音楽やポピュラー音楽を演奏されましたが、今年は打って変わってグラナドス三昧でした。スペイン留学をされ、スペインに原点がある荘村さんにピッタリな選曲。とにかく第20回を目指して頑張るとおっしゃっていましたが、第20回を通過点としてさらに先までご出演いただきたいです。
20日(日)フィナーレのPart1は今年デビュー40周年を迎える福田進一さんによる、ポンセやアルベニスなどの難曲、名曲でした。今回も集中力が高く、休憩時には客席から凄かったという感想が聞こえて来ました。ご本人もだいぶ入れ込んで弾けたそうで、満足度の高い演奏でした。Part2はギター・アンサンブルでした。名曲「ニュー・シネマ・パラダイス」から始まり、3曲目はギタリストの押尾コータローさんによる委嘱作品「Precious」。荘村さん、福田さんのデュオで世界初演されました。昨年のご出演をきっかけに押尾さんとクラシックの名ギタリストの仲が深まったようで、今年はハクジュの委嘱作品の世界初演に加え、大阪のコンサートで共演され、新しい世界が広がって行きそうです。委嘱作品はプレシャスという曲名の通り、かけがえのない愛おしいご縁からできた曲という感じで、両巨匠が愛おしそうに大切に弾かれているのが伝わりました。押尾さんはご家族で聴きにいらしてくださり、お二人の演奏後に拍手喝采を受けていました。プログラムの最後に荘村さん、福田さん、河野さん、上野さんのカルテットでグリーグの「ペール・ギュント」を演奏し、今年のギター・フェスタが無事に終了しました。
来年も8月にギター・フェスタを開催する予定です。ご出演者、ご来場のお客様をはじめ、今年も楽器提供など様々な形でギター・フェスタにご助力いただいた関係者の皆様にも感謝いたします。ありがとうございました。

第17回 Hakuju ギター・フェスタ 2023
原点回帰3 ~6人のギタリストが魅せる華やかなギターの世界~

8月18日(金)19:00開演 第一夜
Part1 上野芽実 ソロ
[出演] 
上野芽実(ギター)
アンコール・ゲスト:荘村清志、福田進一、河野智美

[プログラム]
J.ダウランド:プレリュード P.98、ジョン・スミス卿のアルメイン、ファンタジー P.1a
D.アグアド:序奏とロンド op.2-2
A.タンスマン:「ポーランド風組曲」より “アントレ”、“ガイヤルド”、“クヤヴィアク”、“テンポ・ディ・ポロネーズ”、“コウィサンカ 第2番”、“オベレク” 
F.ソル:幻想曲 第7番 op.30

<アンコール>
J.K.メルツ:タランテラ (上野・河野)
M.ラヴェル(福田進一編):亡き王女のためのパヴァーヌ (福田・上野・荘村・河野)

Part2 徳永兄弟
[出演] 
徳永兄弟

[プログラム]
G.ビゼー(徳永健太郎&徳永康次郎編):「カルメン・フラメンコ・ファンタジー」より Ⅰ. “アラゴネーズ”
徳永健太郎&徳永康次郎:魂の旅人、アレグリアス、マリアーナ
A.ピアソラ(徳永健太郎&徳永康次郎編):リベルタンゴ
徳永健太郎&徳永康次郎:ブレリア・デ・パドレ

<アンコール>
J.ペローニ(徳永健太郎&徳永康次郎編):コーヒールンバ

8月19日(土)16:00開演(約45分)
旬のギタリストを聴く 岡本拓也 リサイタル

[出演] 
岡本拓也(ギター)

[プログラム]
J.K.メルツ:「吟遊詩人の調べ」 op.13 より “マルヴィーナへ”、“遥かなるあなたへ”、“タランテラ”
F.シューベルト(J.K.メルツ編):「ギターのための6つのシューベルト歌曲」より “涙の賛美”、“セレナーデ”
G.レゴンディ:ノクターン 「夢」 op.19
R.シューマン:「子供の情景」 op.15 より 第7曲 “トロイメライ”
R.シューマン:「ミルテの花」 op.25 より 第1曲 “献呈”、第3曲 “くるみの木”、第7曲 “はすの花”

<アンコール>
F.クープラン:牧歌

8月19日(土)18:30開演 第二夜
Part1 河野智美ソロ

[出演]
河野智美(ギター)
アンコール・ゲスト:福田進一

[プログラム]
A.バリオス:大聖堂、最後のトレモロ
H.ヴィラ=ロボス:「5つの前奏曲」より 第1番 ホ短調  “叙情のメロディ”、第3番 イ短調 “バッハへの讃歌” 
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ長調 BWV 1005 より “ラルゴ”
J.S.バッハ:リュート組曲 (パルティータ) ハ短調 BWV 997 より “サラバンド”
F.ハンド:「トリロジー」より 第2楽章、第3楽章
F.ハンド:祈り

<アンコール>
I.アルベニス:エボカシオン (河野・福田)

Part2 荘村清志 ソロ
[出演]
荘村清志(ギター)
アンコール・ゲスト:上野芽実

[プログラム]
L.ミラン:6つのパヴァーヌ
E.グラナドス(福田進一編):「詩的なワルツ集」より 序奏、第1番、第3番、第4番、プレスト
アルフォンソ10世(芳志戸幹雄編):ギターのための「聖母マリア頌歌集」
E.グラナドス:「昔風のスペインの歌曲集」より 第7曲 “ゴヤの美女”
E.グラナドス:「スペイン舞曲集」 op.37 より 第1曲 “ガランテ”、第4曲 “ビリャネスカ”

<アンコール>
E.グラナドス:「12のスペイン舞曲集」op.37より
第5曲 アンダルーサ (荘村)、第2曲 オリエンタル (荘村・上野)

8月20日(日)15:00開演 フィナーレ
Part1 福田進一 ソロ

[出演]
福田進一(ギター)
アンコール・ゲスト:上野芽実

[プログラム]
M.オアナ:ティエント
M.ポンセ:スペインのフォリアによる20の変奏曲とフーガ
I.アルベニス(福田進一編):「スペイン組曲」 op.47 より 第4曲 “カディス”、第6曲 “アラゴン”
V.アセンシオ:小品集「内なる想い」

<アンコール>
E.サティ(R.ディアンス編):グノシエンヌ 第1番 (福田)
S.アサド:さようなら (福田・上野)

Part2 ギター・アンサンブル~委嘱新作・世界初演
[出演]
荘村清志、福田進一、河野智美、上野芽実(ギター)

[プログラム]
E.モリコーネ(鈴木大介編):ニュー・シネマ・パラダイス(1st 荘村/2nd 上野)  
C=テデスコ:「平均律ギター曲集」より プレリュードとフーガ 第4番 ホ長調 op.199-4(福田/河野) 
押尾コータロー:Precious(第17回 Hakuju ギター・フェスタ2023 委嘱作品/世界初演) (1st 福田/2nd 荘村) 
M.ラヴェル(福田進一編):亡き王女のためのパヴァーヌ(1st 福田/2nd 上野/3rd 荘村/4th 河野) 
E.グリーグ(J.スパークス編):ペール・ギュント 第1組曲 op.46(1st 荘村/2nd 福田/3rd 河野/4th 上野)

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