原支配人による公演レビュー

2022年10月20日 (木)
【原支配人による公演レビュー】
2022年10月7日(金) 第167回 リクライニング・コンサート 鷲尾麻衣 ソプラノ・リサイタル

鷲尾麻衣さんと初めてお会いしたのは、2016年にハクジュホールでテノールのジョン・健・ヌッツォさんが主催された「熊本地震チャリティコンサート」の時でした。当時リクライニング・コンサートにご出演いただきたいというお話をしたのですが、諸事情により正式なオファーが先延ばしになっていました。そんな中、2019年に那須高原のとある旅館のロビーで偶然再会。リクライニング・コンサートが実現していないことをお詫びしたら、「まだ覚えて下さっていたのですね」とおっしゃっていただき、この度ようやく実現しました。若手の方にご登場いただくことが多いシリーズですが、オペラ界で活躍されている鷲尾さんが今回ご出演となったのはこのような理由です。鷲尾さんにとってソロリサイタルは相当勇気がいる事だったらしく、「初めてのソロリサイタルは歌いやすいハクジュホールで」と決めていたというお話を終演後に伺い、重ね重ね申し訳ないと思いました。
プログラムの構想を練り上げ、想いのある曲を散りばめてくださいました。オペラ歌手を目指すきっかけになったジョルダーニの「カロ・ミオ・ベン」を人前で歌うのは、中学生の時以来初めてだというエピソードも聞かせていただき、このコンサートへの気持ちが伝わって来ました。ピアノの吉田幸央さんのソロはクラシックではなく、リチャード・クレイダーマンが演奏し一世を風靡した「渚のアデリーヌ」でした。有名なこの曲をハクジュホールで聴けたのは初めてで、とても爽やかな曲調に清涼感を感じました。後半は日本歌曲が中心で、夜公演には「ちいさな法螺」の作曲者である新実徳英先生が聴きにいらしてくださいました。
昼公演はお客様の年齢層が高かったようですが、鷲尾さんがこどものためのコンサートを開催されていることもあるのか、夜公演はお子様が多くいらしていました。客層がこんなにも幅広いリクライニング・コンサートは初めてだったと思います。
夜公演のアンコールは3曲準備されていた中で、お客様からの拍手が大きかった「ウエスト・サイド・ストーリー」の曲を歌ってくださいました。お客様もリラックスし楽しんでいらっしゃる様子で、鷲尾さんの思いがつまった素晴らしいコンサートになりました。

2022年10月7日(金) 第167回 リクライニング・コンサート 鷲尾麻衣 ソプラノ・リサイタル 15:00/19:30開演
[出演]
鷲尾麻衣(ソプラノ)
吉田幸央(ピアノ)

[プログラム]
R.アーン:クロリスに
G.ジョルダーニ:カロ・ミオ・ベン
G.ヘンデル:歌劇「リナルド」より “私を泣かせてください”
P.ドゥ・センヌヴィル:渚のアデリーヌ <ピアノ・ソロ>
山田耕筰(詞:北原白秋):あわて床屋
山田耕筰(詞:北原白秋):この道
穴見めぐみ(詞:金子みすゞ):星とたんぽぽ
武満徹(詞:武満徹):小さな空
新実徳英(詞:谷川雁):ちいさな法螺
R.レオンカヴァッロ:四月

[アンコール]
小林秀雄(詞:野上彰):落葉松 〈昼公演〉
バーンスタイン:アイ・フィール・プリティ〈夜公演〉

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