原支配人による公演レビュー

2022年10月30日 (日)
【原支配人による公演レビュー】2022年10月15日(土) 中木健二&エリック・ル・サージュ チェロとピアノが響き合う 芳醇なオールデュオプログラム

チェロの中木健二さんとは付き合いが長く、これまでチェロ・コレクション、リクライニング・コンサート、そしてヴァイオリンの長原幸太さんとヴィオラの鈴木康浩さんとの弦楽トリオ「アンサンブル天下統一」としてHakuju サロン・コンサートにご出演いただきました。
今回は中木さんから、(フランス留学中に縁が深まったであろう)パリ音楽院出身のピアニストとの共演を考えており、ハクジュホールの響きに合うのではないかというお話があったので、シリーズや企画物ではない形で主催公演を開催する事にしました。室内楽の最小ユニットはデュオであり、例えばブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ」は「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」でありピアノとヴァイオリンは同等であるということをヴィオラの大山平一郎先生が説き、それに賛同し、ちょうど昨年位から、大山先生率いる“Music Dialogue”という団体と連携しております。そして“Duo Project”を共催で行いまして、9月末にはチェロの笹沼樹さんとピアノの上田晴子さんのデュオを行い、そして今回、中木健二さんとエリック・ル・サージュさんのデュオと続いたのは最高のタイミングだったかもしれません。
フランスに長く住まわれていた中木さんとフランス人のエリック・ル・サージュさんのデュオという事で、ヴィエルヌとルクーという、共に1870年生まれでフランスにゆかりのある作曲家による「チェロとピアノのためのソナタ」が演奏されました。2曲の間には、定番の名曲であるベートーヴェンの「チェロとピアノのためのソナタ 第3番」が演奏されました。
前半からお二人は密着しそうな距離感の中で、信頼関係に満ち溢れる演奏を披露。前半終了時のトークでは、天才作曲家ルクーの解説がありました。ルクーはセザール・フランクの後継者として期待されていたが、レストランで食べたデザートにチフス菌が入っていたと言われており24歳で亡くなったそうです。また、ソナタの第4楽章の最後が未完成で、演奏する予定だったV.ダンディによる補筆版が出版されなかったため、未完の原典版を演奏することになり、ルクーのソナタは中木さんも生まれて一度しか聴いた事がなく、お二人とも初めて演奏される珍しい作品で、ソナタの各楽章に詩などの表題がついており、それを各楽章の最初にプロジェクターで投影するというお話がありました。
後半の演奏には陰鬱さを感じました。第1楽章ではモチーフが20分間これでもかというくらい繰り返され、ピアノ2手の四重倍音とチェロ旋律のユニゾンによる激しい音符移動もあり、かなり激しい作品でした。エリック・ル・サージュさんが、チェロとのデュオで45分ほどの作品は初めて弾いたと終演後に話されており、この曲目がかなり挑戦的な内容だった事が改めて分かりました。
マイナーな作品が中心だったので集客が大変心配でしたが、200人を超えるお客様にご来場いただいたのでホッとしました。ちなみに、主催公演で海外の演奏家の方にご出演いただいたのはコロナ禍が始まって以来初めてでした。

2022年10月15日(土) 中木健二&エリック・ル・サージュ チェロとピアノが響き合う 芳醇なオールデュオプログラム 15:00開演
[出演]
中木健二(チェロ)
エリック・ル・サージュ(ピアノ)

[プログラム]
L.ヴィエルヌ: チェロとピアノのためのソナタ ロ短調 op.27
L.v.ベートーヴェン:チェロとピアノのためのソナタ 第3番 イ長調 op.69
G.ルクー:チェロとピアノのためのソナタ (原典版/未完)

[アンコール]
C.ドビュッシー:チェロ・ソナタ ニ短調 より 第3楽章 フィナーレ

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