アーティストインタビュー

クラシック音楽の楽しさを伝えたい

中木健二(チェリスト)
国内外で、ソリストやオケとの共演、室内楽の演奏活動と幅広く活躍し、東京藝術大学でも後進の指導に当たる中木健二さん。中木さんを中心に集結した弦楽三重奏「アンサンブル天下統一」の東京初公演にあたり、中木さんにその思いを語っていただきました。
(聞き手:Hakuju Hall支配人 原浩之)

「アンサンブル天下統一」という名前もユニークですが、どのようないきさつで結成されたのですか?

中木

僕の地元、愛知県岡崎市のシビックセンターに、コンサート専用ホール「コロネット」ができて、そのホールのレジデンスアンサンブルを作りたいと相談されたことがきっかけです。音楽の楽しさを伝える楽団として「天下統一」したいという思いと、徳川家康ゆかりの地であることをかけています(笑)。カルテット(弦楽四重奏)にするのか、トリオ(弦楽三重奏)にするのかなどいろいろ考えましたが、まず初めに、誰と一緒に弾きたいかを考えました。

最初の構想から関わっているのですね。

中木

ええ。弾きたいメンバーでまっさきに浮かんだのが読売日本交響楽団のコンサートマスターでヴァイオリニストの長原幸太さん。大学の先輩で尊敬してる方です。彼に相談したところ、カルテットのほうがレパートリーはたくさんあるけれど、トリオで3人をコアメンバーにしたほうが、ピアニストを招けばピアノカルテットになるし、フルート奏者を招けばフルートカルテットになる、といった具合で面白いのでは、という話になりました。なら、あと一人を誰にしようかということになり、ヴィオラ奏者の鈴木康浩さんしかいない、と意見が一致。彼にお願いすることになりました。

鈴木さんも読売日本交響楽団でソリスト。今、日本で一番聞きたいヴィオラ奏者ですよね。

中木

そうなんです。こうしてメンバーが決まったわけですが、地元に音楽の楽しさを育む責任があるので、一度聞きにきておしまいではなく、「この曲に鳥肌が立つような感動を覚えた」「深い溜息が漏れた」「涙が止まらなかった」など、音楽の本質を積み重ねていく演奏活動を目指しています。それを岡崎発信で、全国の人に伝えていきたいというのが、アンサンブル天下統一の始まりなんです。

東京初公演ですよね。今回は、「音楽家が自宅サロンにお客様をお招きする」というサロンコンサートですが、プログラムはどんな流れで決まったのですか?

中木

ビゼーの「カルメン」やモーツアルトの「魔笛」などオペラを選曲したのは、3人とも歌ものやオペラが好きだからです。せっかくのサロンコンサートということもあり、自宅に集まってお酒を片手に「オペラのあのアリアが最高だよね」などと言いながら、器楽奏者が歌への愛情を熱く伝えるようなイメージでコンサートができれば面白いよね、という話から、このプログラムになりました。

オペラの内容を知らない人も楽しめそうなプログラムですね。

中木

まだ言えないのですが、腹を抱えるほどの笑いあり、鳥肌が立つ場面もあり、涙がでる瞬間もある。きっと楽しんで、音楽を好きになれる、そんな時間になると思います。

それはすごく楽しみですね!当日を楽しみにしています。

※株式会社白寿生科学研究所ユーザー情報誌「ヘルシーメイツ」2019年秋号から転載