第19回 ワンダフルoneアワー
トーマス・バウアー バリトン・リサイタル

「騎士道」と「和魂洋才」が織りなすリート・デュオ

2016年1月17日(日)

①14:00開演(13:30開場) ②17:00開演(16:30開場) ※休憩なし約1時間

各回全席指定3,000円(税込)

[出演]

トーマス・バウアー(バリトン)
ウタ・ヒールシャー(ピアノ)

[プログラム]

ベートーヴェン:連作歌曲「遥かなる恋人に寄す」op.98

シューベルト:船乗り D536 / 冥府への旅立ち D526 / ウルフルが釣りをするように D525
竪琴に寄せて D737 / ブルックの丘にて D853

シューマン:詩人の恋 op.48

[プロフィール]

トーマス・バウアー(バリトン) Thomas Bauer, baritone

トーマス・バウアーは、最初の音楽教育をレーゲンスブルグ大聖堂聖歌隊(ドームシュパッツェン)にて受ける。ミュンヘン音楽演劇大学卒業。2014年夏のザルツブルグ音楽祭では、二つのモーツァルト・マチネ(マンフレッド・ホネック、アダム・フィッシャー)に出演。来シーズン(15年)にはミラノ・スカラ座にてハイドン「天地創造」(ズービン・メーター)、デンマーク・ナショナル・チェンバーオーケストラ(アダム・フィッシャー)、MDRシンフォニーオーケストラ(フィリップ・アーマン)、NDRシンフォニーオーケストラ(ミヒャエル・ギーレン)等の共演が予定されている。また数多くの初演を行い、シュナイダー・ショット音楽賞を受賞。多くの共同作業により、クシシュトフ・ペンデレツキーとは特別親交が深い。ドイツ・ニーダーバイエルン地域で開催されるクルトゥアヴァルト音楽祭(Kulturwald Festspiele Bayerischer Wald)の創設者であり、現在、総監督である。オーケストラとの共演は、ボストン・シンフォニー(ベルナルド・ハイティング指揮)、ナショナルシンフォニー・ワシントン(イワン・フィッシャー)、コンチェントス・ムジクス(ニコラウス・アーノンクール)、チューリヒ歌劇場オーケストラ(アダム・フィッシャー)、ライプツィヒ・ゲヴァントハウスオーケストラ(ヘルベウト・ブロムシュテット、リッカルド・シャイー、サー・ジョーン=エリオット・ガードナー)、ケルンギュルツェニヒオーケストラ(マルクス・シュテンツ)、チューリヒ・トーンハレオーケストラ(サー・ロジャー・ノリントン)、ラジオ・カマーフィルハーモニー・ヒルヴェスム(鈴木雅明)、レジデンティ・オルケスト(ヤン・ヴィレム・ド・ヴリエンド)、NDRシンフォニーオーケストラ(トーマス・ヘンゲルブロック)、コンセルト・ヘボウ・オーケストラ(フィリップ・ヘレヴェッヘ)、アカデミー・フュア・アルテムジーク(ルネ・ジャーコブス)、アニマ・エテルナ(ジョス・ファン・インマゼール)。舞台公演は、演劇アンサンブル「ラ・フラ・デル・バウス」によるスペクタクルな舞台、オルフ作曲「カルミナ・ブラーナ」公演ではヨーロッパ各地で彼を観ることが出来る。13年には、ニコラウス・アーノンクール指揮、ヨーロッパ室内オーケストラで、オッフェンバッハ「青髭」(シュタイアルテ音楽祭)、バーゼル・オペラ劇場でブリテン「戦争レクイエム」(カリスト・ビエイト演出)に出演。13/14年シーズンにはワーグナー「リング」抜粋公演でヴォータンをフランス・ディジョン劇場、14年5月には同じくディジョンで、モーツァルト「フィガロの結婚」の伯爵役を歌った。14/15年には、ツィンマーマン「兵士たち」(ストルツィウス演出、インゴ・メッツマッハー指揮)で、ミラノ・スカラ座デビューが予定されている。リサイタルは、リーダーアーベントを、ハンマーフリューゲルの名手ジョス・ファン・インマゼールと組み、バーゼル、ブリュール、ディジョン、ゲント、パリ、レーゲンスブルグ、ヴェスレーなどで開催している。ディスコグラフィーも数多く、シューベルト「冬の旅」にてフランス オルフェドール(金賞)、韓国ラ・ムジカ・コレア賞。ヘンデル「アポロとダフネ」にてスタンリーサディ&グラモフォン賞、メンデルスゾーン「エリアス」にてエヒョー誌賞などを受賞。13年にはオェーム社より「バッハ・ソロカンタータ集」をリリース。クラウス・フォスヴィンケル製作のテレビ映画「冬の旅 シベリアのシューベルト」は、バウアーのシベリア鉄道を使ったリサイタル旅行の冒険を撮ったドキュメンタリーフィルムで、何度もテレビ放映されている。

ウタ・ヒールシャー(ピアノ) Uta Hielscher, piano

東京生まれ。幼年よりピアノ教育を受け、中村ミキ子氏に師事。ドイツ、ミュンヘン国立音楽演劇大学にて、ピアノをミヒャエル・シェーファー氏に師事、ヘルムート・ドイチュ氏、ジークフリート・マウザー氏、ヴォルフラム・リーガー氏に歌曲伴奏法を、モニカ・レオンハルト氏に室内楽を師事。ドイツ音楽コンクール、国際室内楽コンクール(パヴィア)、青山音楽財団で受賞。歌曲伴奏だけではなく、室内楽奏者として活躍中。トーマス・バウアーと組んで、シュレージヒ・ホルシュタイン音楽祭、シューベルティアーデ、イタリア・ボーツェンやフランス・サントの音楽祭でリーダーアーベントに出演、好評を得た。ナクソス社、アルスムジチ社よりシューマン、R.シュトラウス、マーラーの歌曲をリリース。特にシューマンの歌曲集「詩人の恋」の伴奏は、高い評価を得ている。2008年から、地元であるニーダーバイエルン地方に良い音楽と芸術をという趣旨でトーマス・バウアーと二人で始めたクルトゥアヴァルト音楽祭(Kulturwald Festspiele)は、毎年、いくつものコンサートを開いている。12年にはトーマス・バウアー(バリトン)、ディートリッヒ・ボルヒマイアー(語り手)を迎えて、ヨハネス・ブラームスの「美しきマゲローネ」、14年には、チェロのセバスティアン・ヘスと室内楽デュオ、15年にはジビラ・ルーベンス(ソプラノ)とリーダーアーベントに出演する。14年2月バイエルン州「芸術アカデミー」(Bayerische Akademie Schoenerkuenste)より、07年から芸術を人々に親しく仲介する音楽祭を開催している功績を称えてヴィルヘルム・ハウゼンシュタイン名誉賞を受賞した。現在、ドイツ・ニーダーバイエルンのクルトゥアヴァルト音楽祭(Kulturwald Festspiel Bayerischer Wald))の事務局長。


(C)Ulli Myrzik

後援:ドイツ連邦共和国大使館ドイツ連邦共和国大使館東京ドイツ文化センター東京ドイツ文化センター

オンライン予約

Hakuju Hallチケットセンター 電話:03-5478-8700

DM会員先行発売 4月25日(土)~
一般発売 5月9日(土)~

「騎士道」と「和魂洋才」が織りなす日独リート・デュオ

トーマス・バウアー(バリトン)とウタ・ヒールシャー(ピアノ)のリートデュオ(歌曲二重奏)がドイツ・フライブルクの「Ars Musici」レーベルから最初のCD、シューマンを出した時、あまりに美しい声に驚いた記憶がある。カヴァリエ・バリトン。「ドン・ジョヴァンニ」や「エフゲニー・オネーギン」の題名役、「タンホイザー」のヴォルフラムなど貴族的なキャラクターを演じるのに適した気品、柔らかさを兼ね備えたバリトンはイタリア人に多く、ドイツ人には少ない。バウアーはドイツが久々に生んだカヴァリエ・バリトンだった。

「レコード会社が歌手の専属契約で縛り、オペラの全曲盤を競って録音するようになった1950年代より前にはドイツ人のベルカント、イタリア人のヘルデンとも、もっと当たり前に存在した」。バウアーと同じくミュンヘンを本拠とする日独ハーフのオペラ指揮者、準メルクルは「歴史のトリック」をこう説明する。

1950〜80年代のレコード産業全盛期、日本でのドイツ・リート(歌曲)受容は発音に厳格なディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)やエリーザベト・シュヴァルツコプフ(ソプラノ)、より天衣無縫でカヴァリエ風のヘルマン・プライ(バリトン)を中心に進んだ。バウアーは前者の言語能力と緻密さ、後者の美声を兼ね備えた新しい時代のリート歌いである。自然な歌心は故郷であるレーゲンスブルクの大聖堂で世界的に有名な少年聖歌隊に属して以来、生来の資質に知的でプロフェショナルな磨きをかけてきた成果である。

私生活でも長年のパートナーのウタ夫人は「南ドイツ新聞」の東京特派員を長く務めたゲップハルト・ヒールシャーさんとピアニストだった恵子夫人の間に生まれ、東京で育った。夫君とのデュオ録音ではピアノが、同曲異盤より大きめの音量で収められているため、シューマンやR・シュトラウスがいかに、ピアノにも素晴らしい音楽を与えたかがよくわかる。世界最大のレーベル、「NAXOS」でのシューマン・ツィクルスの録音を経て東京へ還り、「詩人の恋」と向き合う。きりりと吟味され、美しい響きに満ちたリートの世界と再び出会えるはずだ。

池田卓夫(音楽ジャーナリスト)